リネット5

小美濃のお手伝いさせて頂いた人力機は「リネット5」です。この 飛行機の情報は大変少なく、幻と云われることもあり、人力に携 わったOBのなかでもその存在の記憶が不確かな方が多いようです。

「リネット5」の構成を簡単に説明します。
大きなねじり下げを付けた主翼はリネットシリーズのセオリー通り 単桁Dボックス構造で、翼胴結合は低翼位置に胴体についたアルミ の「コの字金具」に単桁が差し込まれ、「せん断ネジ」で止められ ます。ねじり方向の受けは特に見当たりませんでした。

バルサトラスリブはスチレンぺーパのガセットで補強されます。主 翼外皮もスチレンペーパです。いつだったか、取材カメラマンがカ メラだったか、機材だったかを主翼の上の置き、その瞬間に床まで抜け 落ちた事件がありました。そんな裂け易いスチレンぺーパでした。

胴体はアルミパイプのトラス溶接構造で、外皮はやはりスチレンペー パーです。
水平尾翼も主翼と同様の作りですが、逆カンバーが特長でした。 垂直尾翼は胴体とは別に水平尾翼の上にそそり立っています。(胴体自 体が垂直尾翼のような形ですので、最後に垂直尾翼が乗せられ時はやや 違和感を感じました。)

動力伝達はクランク部でベベルギヤで90度変換、トルクチューブ(アル ミパイプ30Φ程)で水平尾翼後端に伝え、ユニバーサルジョイントを 介してスラスト方向を水平に変えてFRP製の大きなプロペラを回しま す。

プロペラは、メス型上でポリエステル樹脂を含侵したガラスクロスに、 5〜6mm角の桧を7〜8本並べてストリンガ補強し、離型して上下を合わせ て完成、だったと記憶します。製作は法政大学のグライダー部OBでスー パーレジンに勤める杉山さんの協力を得ていました。

ベベルギヤユニットは「握りこぶし」ほどのコンパクトな物です。 トルクチューブは胴体中央部に木製の穴を貫通し、振れ止めされま す。穴接触部にはグリースが塗られていました。

プロペラハブは8mm位の角シャフトでトルク伝達をしました。 この構造は後の「イーグレット」シリーズまで継承されます。

ノーズコーンやスピナー等は硬質発泡ウレタンを加工し、ポリエステ ル樹脂を塗っては磨きを繰り返し、最後に裏から学食のカレーのス プーンでウレタンを取り去ります。卵の殻みたいになったら出来上がり です。
この作風は後の「イーグレット」も全て同じやり方で。伝統でしょう か、なぜか赤く塗ります。


プロペラの構造が判ります。写真は飛行中の「リネット2」


「リネット5」、脇に立つのは石川先輩です。